科学技術研究という「人の営み」を社会科学的な視点から検討することは、知識基盤社会とも言われる現代において益々重要となっています。そのような中で、科学技術の進展がどのような倫理的・社会的・法的な含意を生み出しているのでしょうか。また社会の中で科学技術はどのように語られ、また制度化されているのでしょうか。このような問題意識から、科学技術を巡るメディア上でのマクロトレンドや政策動向、またコミュニケーションの問題について研究をしてきました。2011年3月11日の東日本大震災以降は、3.11を巡るメディア動向の問題についても微力ながら取り組んでいます。
これまでに、生命科学と社会、遺伝子組換えや幹細胞を巡る議論、メディア言論動向分析、科学技術イノベーション政策のための科学、東日本大震災を巡る構造的課題などに関わる論文を発表しています。
現在実施中のプロジェクト(研究代表)
現在、研究代表者として実施中のプロジェクト一覧です。
本プロジェクトでは、科学の社会的議論を迅速に焦点化する「リアルタイム・テクノロジーアセスメント(RTTA)」システムの構築を行う。この目的のために、先端情報技術の倫理的・法的・社会的影響(ELSI)について、メディア分析と予測評価手法(ホライズン・スキャニング)による議題抽出を行い、さらに先端情報技術の専門家をはじめとした多様なステークホルダーが参加する「議題共創プラットフォーム(NutShell)」を開発する。また分子ロボティクス分野ならびに人工知能分野に対して、このリアルタイム・テクノロジーアセスメントシステムを適用し、ELSI議題の抽出と知見の現場の研究者へのフィードバックを実践する。これらの研究を通じて、先端情報科学をはじめとする萌芽的科学技術をめぐる、より良い議題構築プロセスと知見の現場へのフィードバックの在り方を提案する。
「責任ある研究・イノベーション(Responsible Research and Innovation: RRI)」を巡る議論は、2010年以降、欧州を中心に急速に拡大しつつある。しかし、RRIの実践とはいかなる形で達成されるのかについては必ずしも明らかではない。そこで本研究では、RRIをめぐる理論的考察と実践的な課題が交差するテーマとして、RRI教育の実践、評価、そしてデュアルユース論争に注目する。これらのテーマを横断的かつ包括的に検討することを通じて、RRIを巡る実践的課題の抽出と理論枠組みの新しい展開を目指す。
急速に発展するヒトゲノム研究・再生医療などの萌芽的科学技術では、その倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の発生もまた多様化し、社会的な議論を必要とする。しかしながら、ELSIを巡る社会的な関心の所在をいかに探索し、また社会的な議題として構築していくのか、その議題探索の在り方と理論的枠組みにはまだ課題が残されている。
そこで本研究では、Guston & Sarewitz(2002)が論じるリアルタイム・テクノロジーアセスメント(RTTA)の議論を補助線としつつ、ヒトゲノム研究ならびに再生医療を事例として、定量的・定性的なメディア分析を活用した「早期の警鐘とコミュニケーション」の在り方を検討することで、萌芽的科学技術を巡る社会的議題の探索と構築に関わる課題を明らかにする。
現在実施中のプロジェクト(分担・協力)
現在、研究分担者・協力者として関わっているプロジェクト一覧です。
- 文部科学省・私立大学研究ブランディング事業 成城大学『持続可能な相互包摂型社会の実現に向けた世界的グローカル研究拠点の確立と推進』
- 日本学術振興会・科学技術研究費助成事業基盤研究(C)『トランスサイエンスからポストノーマルサイエンスへ』(代表:神戸大学・塚原東吾教授)
- 文部科学省: 科学技術人材育成費補助金「リスクコミュニケーションのモデル形成事業」日本再生医療学会『社会と歩む再生医療のためのリテラシー構築事業』
- JST-RISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学」『コストの観点からみた再生医療普及のための学際的リサーチ』(代表:神奈川県立保険福祉大学・八代嘉美教授)
- 公益財団法人セコム科学技術振興財団『ハイブリッド・メディア空間でのリアルタイム・テクノロジーアセスメント技術の開発』(代表:早稲田大学・田中幹人准教授)